Interview

なぜ敷地いっぱいに家を建てないのか。余白が暮らしを豊かにする。

福岡県大川市中木室にある関家具工務店のモデルハウスの敷地は約73坪。建物の延床面積は約227坪で、敷地いっぱいに建てているわけではありません。外から見ると「もっと大きくできるのでは」と感じる方もいるでしょう。

関家具工務店の事業部長・石井さんは、建ぺい率・容積率の上限いっぱいまで建物を建てるよりも、主屋のまわりにゆとりを残す設計を大切にしています。見た目のバランス、光と風、コストとこだわりの両立、そして「小さくても広く感じる・広く使える」工夫について伺いました。

かっこいい家は、定食のお膳のようにバランスがいい

土地には建てられる大きさの上限があります。それでも決して上限いっぱいに建てることが正解ではない、と石井さんは言います。

石井さん 「土地の面積に対して、建ぺい率・容積率という係数が決まっていて、その土地にどれくらいの大きさの建物を建てられるかの上限が法律で決まっています。それいっぱいに建ててもいいんでしょうけれども、土地に対して建物が建ったときに全体のゆとりがないと、見た感じかっこいいとは思えないんですよね。

かっこいい家というのは、敷地の中に主屋があって、例えば小屋があったり、シンボルツリーが主屋からほどよく離れた場所に立っていたりすると、すごくバランスが良い」

石井さんは、この敷地全体のバランスを定食のお膳にたとえます。敷地を一枚のお盆、主屋や小屋をその上に並ぶ器と考えると、建物単体ではなく、配置や余白まで含めて住まいの美しさが決まるという考え方が伝わります。

石井さん「家の敷地というのも似たような感じがあって。お盆の上にドカッと一個だけ、というどんぶり物みたいな感じではなく、バランスよく配置したいというのがありますね」

小さく建てる。光と風を取り込み、優先順位を整える

建物のまわりに空間があると、隣家との距離が取れ、太陽の光の入り方や風の通り道も変わります。

石井さん 「敷地いっぱいに建てると、隣の家との間がどうしても狭くなって、太陽の光の入り方も隣の家に遮られたりしますし、風も入りにくくなります。主屋のまわりにゆとりの空間があると、明るいし涼しいし、冬は太陽の光がしっかり入ることで温かい家にもなります。良いことが増えるんですよ。」

さらに、小さく建てると建築コストを抑えやすくなり、こだわりに予算を回しやすくなります。ただし石井さんは、小さく建てるには暮らしの優先順位を決めることが欠かせない、と強調します。

石井さん 「大きいお家よりも小さいお家のほうが金額は抑えられる。何にもこだわりがない大きいお家を建てるよりも、しっかりとこだわりがあって、満足のいく小さい建物を建てる。これって実は、賢い人じゃないと建てられないんですよ。

小さく建てるためにはものすごくいろんなことを考えて、お客様にはやりたいことの優先順位、叶えたいことの優先順位をしっかり考えてほしい。我々はその要望を聞いて、負担が小さい状態でどれだけ満足度を高められるかを考えて家づくりをしているので。その結果できた小さい家がゆとりを生んで、そのゆとりが太陽の光だったり風を取り込む工夫だったり、いろんなプラスの要素になる。」

小さな家を広く使う工夫は、設計する側だけで完結するものではありません。施主様自身が暮らしの優先順位を考え、それを設計側へ伝えることも欠かせない。石井さんは、その難しさを「賢い人しか小さい家は建てられない」と表現します。

小さくても広く。見通し距離と、目的を重ねる

実際に中木室モデルハウスに入ると、坪数以上に広く感じるという声があります。石井さんの自論は、「広く見えて広く使えるなら、実際に広いのと一緒」というものです。

大きな家でも、収納や用途ごとに空間を細かく区切った結果、家族が長く過ごすLDKが思ったほど広くならないケースがあるといいます。対して中木室では、リビングドアを開けた瞬間に、室内で最も長い対角線方向へ視線が抜けるよう設計しています。部屋の端から端までを見せることで、実際の面積以上の広がりを感じられる工夫です。

石井さん 「たとえば40坪のお家でも、細かく区切った結果、あれ?LDKなど家族が一番長い時間を過ごす空間がそんなに広くなくなっちゃって。それよりも、ここのモデルハウスみたいに、リビングドアを開けた瞬間に家の対角線が見える。要は建物の中で一番遠い見通し距離が視界に入るように作っている。そうすると27坪台でもすごく広く見えるんですよ。」

さらに、子どもの勉強、持ち帰った仕事、奥様のちょっとしたワークスペースのように、使う時間帯が異なる複数の用途を一つのスペースに重ねることで、必要な面積を抑えながら、空間を広く使えるようにしています。

小さく建てることは、我慢ではありません。敷地に余白を残し、光と風を取り入れ、優先順位をつけて空間を重ねる。それが関家具工務店の、中木室モデルハウスに込めた考え方です。写真や動画では伝わりにくい広がりは、ぜひ現地で体感してください。

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